技術解説(富士フイルムメディカル)
2024年9月号
Step up MRI 2024
1.5T超電導MRIシステム「ECHELON Synergy」Ver.10について
市川 真仁[富士フイルムメディカル(株)MS事業部営業技術部]
人工知能(AI)技術*1の活用などによりワンタップで撮像の実行をアシストするさまざまな機能を搭載し,検査ワークフローを効率化するワイドボア1.5T超電導MRIシステム「ECHELON Synergy(エシェロン シナジー)」(図1)*2に,MRI検査の効率化を妨げる課題の一つである被検者の体動起因の悪影響に対する機能と,AI技術を活用して画質向上させた機能を搭載した。
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図1 1.5T超電導MRIシステム
「ECHELON Synergy」
■IQ Retouch
IQ Retouchは,撮像中に各チャンネルの画像や感度データ,補正用のデータを保存しておき,撮像後,出力された画像の再構成に関連するパラメータを変更して,再度画像を出力することができる(図2)。変更できる再構成に関連する特長的なパラメータを紹介する。
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図2 IQ Retouchの操作画面
1.DLR Clear
DLR Clearは,パラレルイメージング「RAPID計測」で得られた画像に対して,畳み込み演算を活用した再構成処理を適用し,画質を維持しながら,位相エンコード方向,周波数エンコード方向,スライスエンコード方向のサンプリング不足により発生するトランケーションアーチファクトを低減することで高画質化する画像処理機能である(図3)。「SynergyDLR」を併用して,512よりも大きな再構成マトリックスの高分解能撮像も可能で,超解像(Super-Resolution)とも呼ばれる。
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図3 DLR Clearの適用効果
2.DLR Rise
DLR Riseは,「RAPID計測」で得られた画像に対して畳み込み演算を活用した再構成処理を適用し,画質を維持しながらノイズを低減することで高画質化する画像処理機能である。ノイズを低減する際に,背景信号のノイズ分布を用いて画像を規格化することで,安定したノイズ低減効果を得ることができる(図4)。
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図4 DLR Riseの適用効果
3.Exp.RAPID
パラレルイメージングを用いた撮像で,位相エンコード方向の撮像視野サイズパラメータを誤って設定した場合,撮像視野外の信号が多重折り返しアーチファクトとして画像に残留する。Exp.RAPIDは,指定した再構成視野拡大率に応じてパラレルイメージングの再構成視野を拡大して画像再構成をやり直すことで,再撮像せずに多重折り返しアーチファクトを除去することができる(図5)。
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図5 Exp.RAPIDの適用効果
■Synergy Vision
AI技術を活用して被検者の体動を検知する被検者監視システム「Synergy Vision」を搭載した。ボア内の前後に設置した2つのカメラにより,被検者の状態を視覚的に観察することができる。また,体幹部の動きから呼吸の動きを推定し,呼吸動波形・回数も表示する。さらに,被検者がガントリから抜け出してくるような大きな動きや,咳などの小さな動きを検出し,通知音と画面表示で通知することで操作者に気づきを促し,体動によるアーチファクトの出現を予測する一助となりうる(図6)。
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図6 Synergy Visionの画面(左)と大きな体動を感知した時の通知画面(右)
a:フロントカメラ映像
b:リアカメラ映像
c:呼吸動波形と呼吸数
d:体動情報
■StillShot
IterativeRAPIDによる繰り返し演算を活用した再構成処理で,後述のStillShot Maskにより除外された部分が補間され,咳,くしゃみ,不随意運動,息止め不良といった,動いた後に元の位置に戻る体動アーチファクトを低減できる。撮像時に体動を検出するためのナビゲータパルス(Motion Navi)を印加し,基準値に対するナビゲータエコーの値が一定の閾値を超えるものを除外するマスク(StillShot Mask)を作成する機能を「Navigated StillShot」,ボア内に設置されたカメラ2台の映像からボア内の体動を検出し,StillShot Maskを作成する機能を「Visual StillShot」と呼ぶ(図7)。Visual StillShotとNavigated StillShot(カメラを用いない体動検出処理)は併用が可能である。
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図7 StillShotの概念図
■SeriesSave
SeriesSaveは,撮像が途中で中断された場合,すべてのデータ取得が完了していなくても,必要最低限のデータがそろっている場合に,取得ずみのデータを用いて画像再構成を行う機能である(図8)。
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図8 SeriesSaveの適用効果
今回,AI技術を活用した画質向上技術と体動に起因した課題に対して検査効率を向上する機能について紹介した。当社は,医療従事者の負担を減らすための各種サポート機能を充実し,MR検査のスループットを図るとともに,診断の質に重要な画質の向上もめざしている。このような取り組みが,結果的に患者の健康維持増進に貢献することだと考え,今後も新たな技術開発を進めていきたい。
*1:AI技術の一つであるmachine learningを設計に用いている。導入後に自動的にシステムの性能や精度が変化することはない。
*2:販売名:MRイメージング装置 ECHELON Synergy(認証番号:305ABBZX00004000)
ECHELON Synergy,StillShotは富士フイルム株式会社の登録商標。
●問い合わせ先
富士フイルムメディカル株式会社
営業本部 マーケティング部 販売促進・広報グループ
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