剖検脳MRI画像から海馬亜領域を判別するAI(2025/1/28)
2025-3-3

アルツハイマー型認知症などの加齢進行性疾患は,脳の神経細胞の脱落が原因となる疾患である。こうした脳疾患の病態解明には,疾患の最終像となる脳を用いた研究が欠かせない。特に認知症の病態と関係する海馬領域の解析は示唆に富むが,人手と時間を要する現状がある。これに対し,米テキサス大学の研究チームは,剖検脳MRI画像から,海馬およびその亜領域を高い精度で自動判別するディープラーニングモデルを発表した。
神経科学研究の手法を取り扱うNeuroscience Methodsに掲載された同研究では,神経変性疾患患者における15の剖検脳MRI画像(T1強調像・T2強調像・SWI(T2*強調像と類似))を用いて,畳み込みニューラルネットワーク(CNN)モデル「DeepAIM」の教師あり学習を行った。DeepAIMは,CNN構造を基にしたU-netにAttention機構を導入したもので,同U-netを用いた4つの先行研究と比較し,海馬,海馬亜領域(歯状回,海馬頭部,海馬体部,海馬尾部)の判定において最も優れた精度を示した。また,SWI画像を含むマルチモーダルなMRI画像を学習に用いることが,高い精度に繋がることも明らかとなった。
研究チームは「従来の病理組織学的手法と組み合わせることで,神経画像研究は未だ発展の余地がある。機械学習などの技術を掛け合わせることで,海馬研究を加速させたい」と述べている。今後は,より大規模なデータへの適用や,モデル構造の改良による学習効率の向上が期待されている。
【参照論文】
Convolutional Neural Networks for the segmentation of hippocampal structures in postmortem MRI scans