ITEM2022 フィリップス・ジャパン ブースレポート
“Illuminating the path to precision diagnosis.”をテーマに1.5T MRI装置「MR5300」を始めとする多くの新製品・アプリケーションをアピール
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2022-4-27
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フィリップス・ジャパンブース
フィリップス・ジャパンは,“Illuminating the path to precision diagnosis.”(個別化医療に向けて)をITEM2022のテーマに掲げた。近年,同社は医療従事者の負担軽減や患者満足度向上,医療費の削減などを目的に,予防や診断,治療という一連のワークフローを人工知能(AI)を用いて自動化する多くの製品・ソリューションを開発している。
画像診断機器を中心としたプレシジョン・ダイアグノシスノコーナーでは,検査,診断,レポート作成の一連の流れの中でAIとヘルスケアITを組み合わせた“Radiology Workflow Suite”のソリューションを中心に展示を行った。中でも,国内初展示となる1.5T MRI装置「MR5300」は,「BlueSealマグネット」によるヘリウムフリーの実現や次世代高速化技術“SmartSpeed”,“Smart Workflow Solution”によるワークフロー効率化などをアピールし,来場者の注目を集めた。また,CTコーナーでは,ITEM初披露であるスペクトラルCT「Spectral CT 7500」や64列128スライスCT「Incisive CT Premium」が展示された。さらに,超音波装置では,肺エコーや肝脂肪定量化ツールなどの新たなアプリケーションが,ヘルスケアITでは“Integrated Diagnostics”の基盤ソリューションとなる「Vue PACS」や「ワークフローオーケストレータ」などがそれぞれ紹介された。一方,Image Guided Therapy(IGT)コーナーでは,最新外科用イメージシステム「Zenition」の実機や,業界初となる拡張現実(AR)を用いた脊椎用外科手術支援ナビゲーションシステム「ClarifEye」のシミュレータなどが展示された。
●MR:ヘリウムフリーで次世代高速化技術“SmartSpeed”を搭載する新装置「MR5300」が登場
●CT:全領域で超高速スペクトラル撮影が可能な「Spectral CT 7500」をITEM初披露
●ヘルスケアIT:“Integrated Diagnostics”の基盤ソリューションをアピール
●超音波:肺エコーや肝脂肪定量化ツールなどニーズの高い最新ソフトウエアが登場
●IGT:拡張現実を利用した次世代脊椎用ナビゲーションシステム「ClarifEye」を紹介
●MR:ヘリウムフリーで次世代高速化技術“SmartSpeed”を搭載する新装置「MR5300」が登場
2022年3月に発売されたMR5300の最大の特徴は,BlueSealマグネット搭載により,ヘリウムフリーを実現したことにある。7リットルの液体ヘリウムで超電導状態の維持を可能にし,ヘリウム補充を不要にした。また,“EasySwitch Solution”機能により,ダウンタイムが発生する前にトラブルを予測,迅速に対応し,持続可能なMR運用を実現する。さらに,検査室から操作室までのワークフローを効率化するSmart Workflow Solutionを搭載。ガントリ前面のタッチパネル“VitalScreen”やカメラとAI解析を用いたタッチレスの呼吸センサ“VitalEye”などのAIを活用したソリューションにより,複雑な臨床タスクや運用タスクを自動化する。Smart Workflow Solutionの一つであるデジタルコイル「Breeze coil」は軽量かつ柔軟で,検査部位への密着性に優れている上,SNRを最大限に引き出し,高い空間分解能が得られる。
MR5300のもう一つの特徴が,次世代高速化技術SmartSpeedである。圧縮センシングを使用した高速化技術“Compressed SENSE”に新開発のSmartSpeedエンジンを統合したもので,従来のパラレルイメージングより最大65%の高速化,高空間分解能化を実現する。加えて,ラジアルスキャンやEPIにもCompressed SENSEの併用が可能になり,適応シーケンスが97%に拡大した。
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国内初展示の1.5TのMRI装置「MR5300」。「BlueSealマグネット」により,ヘリウムフリーを実現した。
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ワークフローを効率化する“Smart Workflow Solution”
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軽量で柔軟性が高い「Breeze coil」。ケーブルの取り扱いも容易で安全性にも優れている。
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MR5300搭載の“Ambient Experience Inbore Solution”。患者は音楽を聴きつつ鏡を利用して映像を見ることができ,検査中の不安を軽減する。
●CT:全領域で超高速スペクトラル撮影が可能な「Spectral CT 7500」をITEM初披露
CTコーナーのトピックスは,2021年7月に国内で発売したSpectral CT 7500と64列128スライスCT Incisive CT Premiumである。Spectral CT 7500は2層検出器を搭載したスペクトラルCTで,循環器,救急,小児,高体重患者,オンコロジー,インターベンションなどのすべての領域で超高速スペクトラル検査を可能にする。2層検出器は,2016年発売の「IQon Spectral CT」から搭載され,Spectral CT 7500では新たに散乱線を低減するAnti-scatter gridを搭載したほか,2層構造の最適化による低被ばくや検出器幅の拡大による超高速撮影を実現した。また,ハードウエアも進化しており,秒間400mm以上の撮影が可能になったほか,寝台の耐荷重を307kg,ガントリ開口径を80cmとしたことで,あらゆる体型の患者や救急撮影に迅速に対応する。
Incisive CT Premiumは,2019年に国内で発売した128マルチスライスCT「Incisive CT」に,新たにAIをベースとした4つの新機能を持つ“Precise Suite”を搭載した。AI画像再構成機能“Precise Image”は,最大80%の線量低減や85%のノイズ低減,60%の低コントラスト検出性の改善を実現する。また,心臓専用のモーションフリー画像再構成機能“Precise Cardiac”やAIカメラを使用した自動ポジショニング機能“Precise Position”,自動ニードルガイダンスが搭載された先進インターベンションツール“Precise Intervention”により,画質や検査ワークフローを大幅に向上させる。なお,Precise CardiacはSpectral CT 7500にも搭載されている。
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「Spectral CT 7500」の進化したハードウエア
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“Precise Suite”の一つである心臓画像再構成機能“Precise Cardiac”
●ヘルスケアIT:“Integrated Diagnostics”の基盤ソリューションをアピール
フィリップス・ジャパンでは,画像診断におけるinformaticsソリューションを統合した“Integrated Diagnostics”により,画像診断領域のワークフローの最適化をめざしている。ブースでは,その基盤となるソリューションが紹介された。
Vue PACSは,3Dや解析機能を搭載し,また自動レジストレーションなどで読影効率を向上させるオールインワンの読影PACSビューワである。また,ワークフローオーケストレータは,検査の緊急度やサブスペシャリティなどを考慮し,遠隔読影を含む読影医の自動割り当てや優先度を管理するもので,読影の質と効率を両立させて医師の負担軽減と業務バランスの平準化を図り,院内のワークフローを効率化させる。さらに,読影の優先順位決めにAIを活用した「AIトリアージ」では,AIによる画像解析結果を検査リストに反映し,より緊急性の高い症例を優先して読影するように表示する。
そのほかに,画像解析ワークステーション「IntelliSpace Portal」のアプリケーションの一つで,心臓の弁の血流の可視化やFlow解析が可能な“MR Caas 4D flow Heart”なども紹介された。
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VNAとしても運用可能な統合画像プラットフォーム「Vue PACS」
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「AIトリアージ」は,AIによる画像解析結果を活用し,何らかの疾患の可能性が高い症例は優先して読影するように表示する。
●超音波:肺エコーや肝脂肪定量化ツールなどニーズの高い最新ソフトウエアを搭載
超音波診断装置では,携帯型装置「Lumify」と据置型ハイエンド装置「EPIQ Elite」が展示され,それぞれ最新ソフトウエアが紹介された。2020年に発売されたLumifyは,セクタ,リニア,コンベックスのすべてのトランスジューサでパルスドプラ法による血流の定量評価が可能になり,POCUSでの診断の信頼性向上が期待される。さらに,コロナ禍で肺エコーの注目度が増す中で,肺炎などに特徴的なB-lineを自動計測してリアルタイムで表示する“B-lineカウンティング”機能が搭載されたほか,従来の10インチタブレットに加え,新たに7インチサイズが選択肢に加わった。
EPIQ Eliteは,心臓や腹部,表在などの多領域で使用可能な“ユニバーサルプラットフォーム”をコンセプトに掲げるが,今回,新たに肝脂肪定量化ツール“Liver Fat Quantification”が搭載された。Liver Fat Quantificationの“Attenuation imaging(減衰イメージング)”では,肝脂肪化に伴って増加する減衰係数をカラーボックスで表示し,その中に計測ROIを配置し,計測を行う。従来の主観的な判断とは異なり,数値化による客観的な判断が実現する。また,数値の信頼度を表す信頼度マップもカラー表示し,再現性の高い計測が行える。“Hepatorenal Index(肝腎インデックス)”では,肝臓と隣接する腎臓の輝度をそれぞれ画像調整を除した上で数値化して比率を計算し,客観的な肝腎コントラストを算出する。
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携帯型超音波装置「Lumify」。3種類(セクタ,リニア,コンベックス)のトランスジューサを搭載する。
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Lumifyに搭載された“B-lineカウンティング”機能
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「EPIQ Elite」に搭載された肝脂肪定量化ツール“Liver Fat Quantification”
●IGT:拡張現実を利用した次世代脊椎用ナビゲーションシステム「ClarifEye」を紹介
IGTコーナーでは,最新外科用イメージシステムZenitionの実機や血管造影X線診断装置「Azurion」のシミュレータが展示されたほか,ハイブリッド手術室などで次世代の脊椎手術をサポートする脊椎用ナビゲーションシステムClarifEyeが紹介された。
Zenitionは,FPDと回転陽極型X線管を搭載した同社のモバイルCアーム装置の中で最もハイエンドな装置。金属アーチファクト抑制機能“Metal Smart”と“Body Smart”機能を組み合わせることで,被ばく低減を実現した。
Azurionは,ベッドサイドのタッチ式操作パネル“Touch Screen Module”や,コーンビームCTによる3D画像の計測や解析機能を向上させたアプリケーション“Smart CT”などを搭載,優れたユーザーエクスペリエンスにより,快適な治療環境を提供する。今回,従来の血管撮影に加え,新たに拡張現実(AR)を利用した脊椎用ナビゲーションシステムClarifEyeが加わることとなった。ClarifEyeは,FPDの周囲に搭載されたカメラで術野を撮影,体表に配置したマーカーを認識し,コーンビームCTによる高画質な3D画像でスクリューの刺入点や経路を計画する。穿刺ニードルの位置をトラッキングして位置情報を特定,ARを利用して患者の体表画像と透視画像に重ね併せて表示し,ナビゲーションを行う。ナビゲーション下での椎弓根スクリュー挿入精度はフリーハンド時より向上していることがデータでも示されている。また,従来のナビゲーションシステムとは異なり,ClarifEyeはナビゲーションシステムとイメージング装置が一体化しているため,機器のセッティングや入れ替えなどが不要になり,手術のワークフローが向上する。
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最新外科用イメージシステム「Zenition」
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血管造影X線診断装置「Azurion」には“Smart CT”などが搭載され,スムーズな治療を実現する。
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脊椎用ナビゲーションシステム「ClarifEye」のデモンストレーション
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実際の術野と透視画像,穿刺ニードルの位置情報などを重ね併せて表示し,ナビゲーションを行う。
●お問い合わせ先
社名:株式会社フィリップス・ジャパン
住所:東京都港区港南2-13-37 フィリップスビル
TEL:0120-556-494
URL:www.philips.co.jp/healthcare