「第10回ディスプレイの精度管理セミナー」が開催
——ディスプレイの医療機器化や新しい品質管理ガイドラインについてオンラインセミナーで広く周知
2025-1-21
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「第10回ディスプレイの精度管理セミナー」を
オンラインで開催
公益社団法人日本診療放射線技師会(JART)と一般社団法人日本画像医療システム工業会(JIRA)は2025年1月18日(土),オンラインで「第10回ディスプレイの精度管理セミナー」を開催した。同セミナーは,医用画像表示用ディスプレイ(モニタ)の精度管理の必要性を診療放射線技師に周知するために,2013年からJARTとJIRAが「モニタ精度管理セミナー」の名称で毎年共催してきた。厚生労働省が2024年7月8日に一般医療機器の分類に「GSDFキャリブレーション機能付き画像診断用ディスプレイ」を新設し,特定保守管理医療機器に指定したことから,条件を満たした医用画像表示用ディスプレイが医療機器となることを受け,今回からセミナー名称が変更された。また,医療機器化の経緯や概要,新しい品質管理ガイドラインを広く周知するため,今回はオンラインでの開催とし,4題の講演と質疑応答が設けられた。
1題目に,松田恵雄氏(埼玉医科大学国際医療センター中央放射線部)が「医用画像表示用ディスプレイの特徴と品質管理の実態」を講演した。松田氏は,JARTで実施したディスプレイの品質管理に関するアンケート調査の結果を交えながら,複数ディスプレイで表示画像の一貫性を確保するためには階調補正が可能なGSDF階調のディスプレイを使用する必要があると述べ,GSDFは輝度差を錯覚する人間の脳の特性を踏まえたJNDによりスケールを設定していることで,コントラストの変化が輝度に依存せずに一定となることを解説した。また,環境光の映り込みの影響やディスプレイの解像度の考え方を説明するとともに,診断に用いることができるディスプレイの指針を示した「デジタル画像の取り扱いに関するガイドライン」(日本医学放射線学会策定)のポイントや管理を行う診療放射線技師の心構えについて触れた。
次いで,児玉直樹氏(JART副会長)が「医用画像表示用ディスプレイ 医療機器化の経緯」と題して講演した。児玉氏は,医療機器のクラス分類や特定保守管理医療機器について概説した上で,従来,医用画像表示用ディスプレイは医療機器に指定されていなかったことから,JARTとJIRAが懇談会・検討会で議論を重ね,診療報酬要望と医療機器化を国に働きかけ,2024年に医療機器化(クラスⅠ)に至った経緯を説明。診療報酬要望を提出するに当たり,医療機関のデータを示すことが国・政府を動かすことにつながると述べ,JARTからアンケート調査の依頼があった際には,ぜひ協力してほしいと呼びかけた。
3題目は,JIRA医用画像システム部会モニタ診断システム委員会で委員長を務める前田一哉氏と副委員長の安田哲也氏が,「JISと整合を取った新しい品質管理ガイドライン(JESRA TR-0049-2024)の紹介」と題して講演した。医用画像表示用ディスプレイの品質管理に関するガイドラインとしては,JIRAが策定したJESRA X-0093が広く認知・活用されているが,国際整合の促進をめざしたJIS T 62563-2(医用画像表示用ディスプレイの受入試験及び不変性試験)の制定(2024年2月),および医療機器化(2024年7月)を受け,JIRAではJISと整合性を取ったガイドラインJESRA TR-0049を2024年10月に制定した。講演では,前田氏によるJESRA TR-0049制定の背景の説明に続き,安田氏がJESRA TR-0049の概要と試験内容・方法について詳細に解説した。なお,現在普及しているJESRA X-0093については,向こう約5年は併用運用とし,その後JESRA TR-0049に完全移行となる。
最後に登壇した青木陽介氏(大船中央病院放射線診断科)は,「病院での品質管理について」と題して,医用ディスプレイ管理の考え方や大船中央病院における精度管理の実際について紹介した。同院では限られた人材で品質管理を行うために,「診療に悪影響を与えない最低限の管理」をポリシーとし,それを着実に実行するための体制を敷いていることを説明。ガイドライン通りの管理を基本に,自動測定機能やキャリブレーションの活用で不具合対応も最低限とするほか,診療科の特性を踏まえたディスプレイの配置計画を立てることの重要性について同院の経験を交えて紹介した。青木氏は,ヒト・モノ・カネが有限な中において,医療の正当性につながる環境を提供する重要な活動である品質管理を行っていくために,診療放射線技師は画像の専門家として管理ポリシーをしっかりと持ち取り組むことが大切だと述べた。
*医用画像表示用ディスプレイの医療機器化の詳細や精度管理の事例,メーカーの取り組みについては,インナービジョン2025年1月号 の特集2「『医療機器』としての医用画像表示用ディスプレイの導入・管理を考える」もご参照ください。
●問い合わせ先
公益社団法人日本診療放射線技師会
TEL 03-5405-3612
http://www.jart.jp/
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