島津製作所が「第102回レントゲン祭・記念講演会」を開催
2025-2-13
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レントゲン博士の功績を讃える
レントゲン祭を開催
(株)島津製作所は2025年2月10日(月),本社大ホール(京都市中京区)を会場に「第102回レントゲン祭・記念講演会」を開催した。レントゲン祭・記念講演会は,レントゲン博士の功績を讃え,遺徳をしのんで,命日である2月10日に毎年開催している。
レントゲン祭でははじめに,式辞として島津製作所常務執行役員・医用機器事業部長の園木清人氏が挨拶した。園木氏は,X線の発見から医療応用への歴史,島津のX線画像診断装置の歩みを紹介した上で,島津製作所の近年のX線装置の取り組みを紹介した。同社は,QOL向上や医療費の増大,医療従事者不足といった社会課題に対応するため,AI技術の活用や自動化を推進し,X線検査に新たな付加価値を提供するイメージングトランスフォーメーションに力を入れている。園木氏はその例として,一般撮影装置のコリメータにカメラを内蔵し,正確なポジショニングを支援して業務の効率化を図る「VISION SUPPORT」や,各種X線装置でのAI活用について紹介した。そして,2025年3月31日で創業150年を迎える島津製作所は,これからも人と社会に真摯に向き合い,イメージングトランスフォーメーションを推進し,医療従事者や患者をサポートする製品開発に努めていくと述べた。
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園木清人 氏(常務執行役員・医用機器事業部長)
次いで,代表取締役社長の山本靖則氏が,祭詞としてレントゲン博士の人柄が伝わるエピソードを交えながら博士の功績を讃え,祭壇に献花を行った。
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山本靖則 氏(代表取締役社長)
休憩を挟み行われた記念講演会では,2つの演題が設けられた。1題目は,島津製作所医用機器事業部技術部の山本淳也氏が「島津製作所 AI活用の取組み」と題して,用途・目的に合わせて各種X線装置に実装されているAI技術について紹介した。X線TV装置に搭載される業務効率化をめざした椎体・大腿骨セグメンテーション「SmartBMD AI Assist」では,2つのAIモデルにより椎体を高精度に検出することが可能で,解析時間が従来の約半分に短縮することなどを紹介した。医療安全を支える技術としては,遺残物確認を支援する回診用X線撮影装置のソフトウエア「Smart DSI」や,ノイズの多い画像でもリアルタイムでデバイスの視認性を向上させる血管撮影装置のAI搭載画像処理エンジン「SCORE Opera」を提供している。また,椎体計測ソフトウエア「Smart QM」では脆弱性骨折の段階での定量的な椎体計測を可能にし,早期に骨粗鬆症を拾い上げ,適切に治療へとつなげられることを紹介。島津製作所は,今後もさらなる医療の質の向上に貢献するため,積極的にAI技術を活用し,社会実装を進めていくと締めくくった。
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山本淳也 氏(医用機器事業部)
2題目には,京都府立医科大学放射線医学教室教授の山田 惠氏が「放射線医学の課題と近未来」と題して講演した。山田氏は,放射線医学の歴史と近年の発展,また自身のキャリアを述べた上で,日本の医療事情を世界の状況と比較しつつ説明し,日本の医療が直面している課題とその解決策について論じた。日本の医療における生産性の低さや,個々の医療者の質は非常に高いもかかわらず患者満足度が低いといった現状について述べた山田氏は,その背景に年功序列や議論を避ける傾向などにより競争原理が働かないことや,対話不全,標準化・専門分化が進まないこと,情報開示の遅れ,学閥といった要因があることを指摘。生産性を向上させ,世界から後れを取っている状況を挽回するには,まずその事実を認識・共有し,集約化・標準化を進め,人材流動性を高めることが必要であると述べた。加えて,国内の医療需要が頭打ちとなる中で視線を世界へと向けること,階級主義的な自らのバイアスに気づくこと,トップが綿密な戦略を練ることなどが必要であるとし,日本の医療が抱える課題を解決するためのカギや進むべき方向性を提示した。
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山田 惠 氏(京都府立医科大学)
●問い合わせ先
(株)島津製作所
https://www.med.shimadzu.co.jp/