「Salesforce」によるアプリケーション開発のポイント 
上中進太郎(株式会社セールスフォース・ジャパン インダストリーアドバイザー本部)
Salesforceを使ったアプリケーション開発

2025-1-22


はじめに

「Salesforce」は,企業が顧客関係管理(CRM)を効率化し,業務を自動化するためのクラウドベースのプラットフォームである。営業,マーケティング,サポート,情報システムなど,複数の部門間での情報共有を容易にし,顧客との関係を強化する。標準機能に加え,企業や医療機関の独自ニーズに応じたカスタムアプリケーションを開発できる点が大きな魅力である。本記事では,Salesforceを活用したカスタムアプリケーション開発の特長や学習方法について解説する。

Salesforceの概要

SalesforceはクラウドベースのCRMプラットフォームであり,顧客管理や営業支援を行うための多彩な製品と機能を提供している。代表的な製品には,「Sales Cloud」と「Service Cloud」があり,これらを利用することで,企業は顧客データを一元管理し,部門間の連携を強化して顧客対応を最適化することが可能となる。さらに,ヘルスケア業界向けには「Health Cloud」が提供されており,診療データの管理をはじめとした医療分野の特有のニーズに対応した機能も備えている。また,ビジネスインテリジェンスツールの「Tableau」やコミュニケーションツールの「Slack」もSalesforceの製品群に含まれている。
Salesforceの特徴として,SaaS型のサービス提供が挙げられる。これにより,企業や医療機関は高額なインフラ投資を避けつつ,スケーラビリティの確保や自動アップデートなどの恩恵を享受できる。さらに,Salesforceのプラットフォーム上で既存サービスをカスタマイズするだけでなく,独自のカスタムアプリケーションを開発することにより,個別の業務ニーズに合ったソリューションを実現できる点が強みである。

ノーコード・ローコードアプリケーション開発の特長とメリット

Salesforceのアプリケーション開発は,ノーコード・ローコードに対応しているため,コーディングの知識がなくても,迅速かつ柔軟にビジネスアプリケーションを開発・展開できる。この特長が企業や医療機関のDXを加速させる要因となっており,以下の特長を持つ。

1.ドラッグ・アンド・ドロップ操作による開発
Salesforceのノーコード・ローコード開発環境は,主に「Lightningアプリケーションビルダー」や「Flow Builder」を利用し,ドラッグ・アンド・ドロップ操作で簡単にユーザーインターフェイス(UI)やワークフローを構築できる(図1)。これにより,ITの専門知識がなくてもアプリケーションや業務プロセスを作成可能となる。

図1 ドラッグ・アンド・ドロップによる容易な開発が可能

図1 ドラッグ・アンド・ドロップによる容易な開発が可能

 

2.カスタムオブジェクトやフィールドの作成
コーディングなしで業務に合わせたデータモデルを作成できるのもSalesforceの強みである。「Lightning Object Creator」を利用すれば,カスタムオブジェクトやフィールドを簡単に作成し,データ管理を効率化できる。

3.業務プロセスの自動化
SalesforceのFlow Builderを使用すると,複雑な業務プロセスもノーコード・ローコードで構築し,自動化できる。例えば,特定の条件に基づいて自動で通知を送信したり,レコードを作成したり,データを更新することが可能である。

カスタムアプリケーション開発のその他の特長とメリット

1.高い柔軟性と拡張性
標準機能に加え,「Apex」というSalesforce独自のプログラミング言語や「Visualforce」「Lightning Web Components(LWC)」を利用することで,カスタムアプリケーションを柔軟に開発できる。ノーコード・ローコード開発だけでも広範な機能を構築できるが,プロコード開発を組み合わせることで,さらに高度なカスタマイズが可能となる。

2.迅速な開発と展開,コストの最適化
Salesforceはクラウドベースのプラットフォームであるため,インフラの構築やサーバの管理が不要であり,開発に集中できる。これにより,短期間でのアプリケーション開発や展開が可能になる。開発が完了すると,すぐに本番環境での運用が可能で,さらにアップデートや新機能の追加も簡単に行える。クラウドベースのため,オンプレミスのシステムと比較して初期導入費用を抑えられ,運用コストも削減できる。

3.豊富な連携機能
Salesforceは他システムとの連携機能が充実しており,APIを介して既存システムとの統合が容易に行える。これにより,異なるシステム間でのデータ連携がスムーズに行われ,情報の一元管理が可能となる。

4.高いセキュリティ
Salesforceは,クラウドプラットフォームとして非常に高いセキュリティ基準を満たしている。データの暗号化,アクセス制御,ログイン監視などのセキュリティ機能が提供されており,特に機密性の高いデータを扱う医療機関や企業にとって信頼性の高い環境を提供している。

Salesforce開発の学習方法とサポート

1.「Trailhead」とオンラインコミュニティ
SalesforceはTrailheadという学習プラットフォームを提供しており,開発者やユーザーはここでSalesforceの機能や開発手法を学ぶことができる(図2)。Trailheadでは,製品や機能ごとに学習モジュールやトレイルが用意されており,初心者でも段階的にスキルを習得できる。また,Salesforceのオンラインコミュニティは非常に活発で,他の開発者やエキスパートと情報を共有し合う場として活用できる(https://trailhead.salesforce.com/ )。

図2 Salesforceの機能や開発手法を学べるTrailhead

図2 Salesforceの機能や開発手法を学べるTrailhead

 

2.「Lightning Platform」ハンズオンセミナー
2024年10月現在,Salesforceはノーコード・ローコード開発に興味のある人を対象に,無料のLightning Platformハンズオンセミナーを定期的に開催している。少人数制でオンライン形式のセミナーであり,実際のアプリケーションをデモ開発することを通じて,Lightning Platformの特徴と開発手順を学べる(https://www.salesforce.com/jp/events/platform-handson/ )。

3.公式サポートとコンサルティングサービス
Salesforceは公式サポートを提供しており,製品契約後は技術的な問題に対して迅速に対応している。さらに,Salesforceの専門家によるコンサルティングサービスも利用可能であり,特定のビジネス課題に対して高度な支援を受けることができる。

まとめ

Salesforceを活用したカスタムアプリケーション開発は,企業や医療機関が独自のニーズに応じたソリューションを迅速に構築するための強力な手段である。業務効率化や顧客関係の強化を実現するため,幅広い業界で利用されている。Salesforceの強力なプラットフォームと充実した技術情報やサポートを活用することで,企業や医療機関はビジネスを革新し,競争力を高めることが可能となる。

*本稿についての問い合わせ先
E-mail:[email protected]


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